大判例

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広島高等裁判所 昭和57年(う)20号 判決

一 被告人は、山口銀行徳山東支店の支店長代理として支店長を補佐し、同支店の預金、貸付、現金その他資金の出納、保管等の業務に従事し、支店長に差支えあるときはこれを代理していたものであり、本件犯行にあたつても、羽嶋に協力して前記の端末機を不正に操作するなどして、同支店に預金するために送金又は持参された資金(原判示第一の一の1ないし34、36ないし39、41、42、同二の1の罪の対象となつた資金)を自由に処分することができる浮金として管理していたものであるから、右資金について業務上占有者の地位にあることが明らかである。

二 被告人及び羽嶋は、各預金者が預金として預け入れるため送金し、又は持参した現金、小切手などの資金を、正規の預金手続をとらず又は不正の手段により払戻しを受けるなどして自由に処分できる状態としたうえ、國本要のために山口銀行から貸付の手続をとることなく、同銀行の帳簿にも記載せずに、パイオニアランドの預金口座などに入金したり、他銀行の預金口座に振込送金するなどしたものであつて、山口銀行の計算において右の行為がなされたものではなく、被告人や羽嶋の計算において右の行為がなされたものと認められる。また、被告人らは右の行為をする権限は全くないのであつて、自己が占有する銀行の資金という財物を権限なくして自己の物と同様に処分したものである。以上の諸点を考慮すると、本件について横領の罪が成立することが明らかであつて、背任罪が成立するものではない。

三 被告人は、羽嶋から本件への協力を依頼され、これを承諾し、そのための手段としてオンライン端末機を不正に操作して預金口座への入金手続を遮断することによつて正規の手続によらない預金証書を作成する方法を提案し、羽嶋の同意を得ているのであるから、この段階で既に共謀が成立しているものというべく、更に被告人は、個々の場合に羽嶋と打ち合わせたうえ、本件犯行の殆どについて自ら又は情を知らない常久京子に指示して前記端末機の不正操作による預金証書作成の作業をして、これによつて浮かせた資金を不正に流用し得る状態に置いたほか、多くの犯行にあたつて自ら又は他の同支店行員に指示して、浮かせた資金を國本のためにパイオニアランドなどの預金口座に入金の手続をしたり、他銀行の口座に振込み送金の手続をするなど、本件犯行についての重要な役割を担当していたものである。以上の諸点を考慮すると、被告人について本件各犯行の共同正犯が成立することが明らかであつて、従犯に止まるものではない。

なお、所論は、「原判決は、被告人が前記の端末機を使用して架空の預金証書を作成したことを共同正犯であると認定する一つの根拠としているが、本件犯行の当初の段階では被告人は右の行為をしていない。」という。しかし、右の行為を被告人自らが行うと前にみたように情を知らない部下の行員を介して行うのとで、共同正犯認定の根拠として差異が生ずるとはいえない。

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